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別れは突然に

2012年07月07日
「・・・あれ?」

ノゾムは、自分に攻撃が当たっていないことを悟った。

じゃあなんで…。

目をそっと開けた。

一匹のブイゼルの体に、穴が開いているようにしか見えなかった。

「…イル!?」

「……ノゾム…よかった無事で」

「よかったとかそういうのはどうでもいいよ…」

イルは、その場に崩れた。

心臓からは出血が止まらない。

もうすぐ、イルは死んでしまう…

そう考えただけで、涙が出た。

「イル、しっかりして!!」

マリンは、静かに、イルへと歩み寄った。

「…イル…」

もう、マリンは、顔を伏せて、しくしく泣き始めた。

「ごめんね…ノゾム…俺は…たぶん…先に行けない…」

そんなの嫌だ。

おいて行かないで。

ノゾムはそういいたかった。

でも、もう手遅れだった。

「…俺がもしも死んでも…悲しむ奴なんて、一人もいない…だって、俺は、生まれてくる必要なんてなかったんだから、とさ…でも、それは昔言えたことだな…もう、今は言わない…こうして、泣いてくれる奴がいるから…」

「イル!!いやだよ…死なないでよ…気をしっかり持って…」

「もう、命の終わりは食い止めようもないさ…俺は…生きてる意味があったのか、その答えを見つけたんだ」

「答え…?」

「意味、あったんだ」

イルはニコリと笑みをこぼした。

「お前やマリンに会えたことが、一番の幸せだったかもしれない…」

イルの目に、涙が浮かぶ。

ノゾムは、血に手を赤く染めながらも、涙を流しながらも、イルの話を聞いた。

「俺は…幸せ者だな…」

そして、何か覚悟を決める表情をした。

「ノゾム、マリン…今まで…本当に…」

ノゾムもマリンも、涙をぽろぽろどころかドバドバ流した。

「…本当に…ありがと…う………」

それが、最期の言葉だった。

イルの出血は止まった。

時も止まった。

全てが静止した状態になった。

「イル…イル!!!!」

イルは、その人生の幕を閉じた。


守りたい

2012年07月07日
「うぐっ…」

電流がイルの体に流れ込む。

痛い…。

「お前が持つ力は、俺たちがもらう」

ディアルガは、あざ笑いながら言った。

俺は…ただ、平和に生きたかっただけだ。

なのに何でこんなことになるんだ…。

ノゾム達も巻き込んで…

俺の力って、結局何の役にも立たずに足を引っ張ってるだけじゃないのか…?

俺の体は、もはやかすれてきていた。

もしかしたら、もうもたないかもしれない。

もしかしたら、死んでしまうかもしれない。

ごめん、ノゾム…マリン…

結局、巻き込んで…














一方ノゾムたちは、

「くっそぉ、どうやって出ればいいんだよ!!」

「技も何も使えないんだもんな…」

「…待てよ?」

外にいる大量のブイゼルのクローンが、暴走し始めた!!

「えぇ!?」

「ちょっちょっちょタンマタンマ!!」

この檻は、瞬く間にブイゼルのクローンで埋め尽くされた。

が。

「あれ?檻がなくなってる!!」

どうやら、外からの力に弱い檻だったらしい。

安易に壊れた。

「内側だけ補強してもねぇ…」

「なるほどなるほど」

ブイゼルのクローンはドアから外へ。

なんだったんだ。

そうとしか言いようもないが、壊してくれたことに少々感謝してしまった。

















静かに、イルがいる部屋に入った。

「ノゾム!」

そして、ついにイルの体に走っている電流の電源を消した。

「…大丈夫?」

「ごめん…迷惑かけて」

「じゃあ帰ろう!!」

しかし、

「なにをしている…」

ディアルガが、そこに立っていた。

ディアルガは、まずマリンを見て、

「お前からつぶす」

マリンに一撃、はがねのつばさをきめた。

「なにするんだよ!!」

ノゾムはマリンに駆け寄った。

マリンは倒れてしまった…。

「このっ…十万ボルト!!」

ノゾムは十万ボルトをディアルガに―――

あれ?この光景…どこかで見た気が…

「うぁっ!!」

後ろにノゾムがふっとばされて、ノゾムは倒れた。

「ノゾム!!」

イルは、疲労した体を引きずりながら、ノゾムのところへ行こうとした。

「とどめだ…うざいネズミめ」

「やめろぉぉ!!!!!」

イルは、最後の気力を振り絞って、ノゾムの前へでた。

そしてこれが、イルにとっての答えとなる。

ときのほうこうは、イルの体を貫通した。
















次回、衝撃の別れ…。

ノゾムの真の力

2012年07月07日
「誰だ!!そこにいるのは!!!」

突然、誰かが来た。

ノゾムはそこに立っていた。

「私たちのものを盗む気か!」

「そもそも、こいつはものじゃないし、第一お前らの仲間でもないし…盗むっていうより、取り返しに来ただけだな、じゃ、俺ら行くから」

ノゾムがそう言って抜けようとした。

「これはボスに献上する大切な品物なんです」

そう言い放った下っ端に首をつかんだノゾムは、

「品物なんかじゃねーんだよ!」

と切れた。

マリンは、心の奥底で、何かうずめいているような気がしていた。





















そうして結局その下っ端とかがしつこくてノゾムが十万ボルトを放つ羽目になったが…。

コーザも協力しながらみんなで力を合わせて戦っていた。

そして出口まで来た。

これで戻れる…!!

しかし、そこに立っていたのは、数百人に上る…。

全員が、ブイゼルという敵であった。

「なんで…」

みんな同じ顔。

イルの顔と同じ顔つき…。


もしかして、クローン?


ノゾムはそんな気がした。

「まさか…これ、イルのクローンじゃ…」

「え!?」

「顔も全部同じだよ…」

イルが固まった瞬間、上から檻が落ちてきた!!

イルはその中に閉じ込められて…。

イルの体に、ものすごい量の電流が走った。

「イルっ!?」

イルの体が、かすれて見える…。

まさか、存在を消すつもりじゃ…!!

「ようやく捕まえたか」

そこに立っていたのは…。





















「ディアルガ!?」





















イルの体はもうもたない!!

どうすれば…

このディアルガは…

「大事な品物を逃がそうとしてくれたな…お前たちも捕まえる」

檻の中に、みんな閉じ込められた。

電流こそ流れはしないものの、何もすることはできなかった。

技も全部跳ね返ってくる…。

そして、イルが連れ去られるのを黙ってみていた。

見ていることしか、できなかった。

「…ここ…です」

コーザに案内されて到着したのは、ウォーターヒルズが見えるきれいな通りであった。

「…ここで、イルが…」

「僕、ウォーターヒルズに向かっていたわけじゃなくて…なんか、誰かが困っているの、見過ごせなくて…」

「そりゃ同感だぜ」

「来てくれてありがとうね」

ノゾムは足元を見下ろした。

その時に、あることに気が付いた…。
















「…どこだ…ここは…!!」

さほどダメージも大きくなかったので、一瞬気を失っただけだ。

しかしとてつもなく右の頬が痛んでいる。

殴られたからだ。

痛めた頬を触ろうとすれば、鎖の音が聞こえた。

手も足も、尻尾も、鎖でつながれているのだ。

漫画のように鎖をばりっと行くことなど不可能である。

「…水鉄砲っ!!」

技が出ない。

水タイプの技も使えないのか…。

「気分はどうだ?」

ニヤニヤと尋ねてきたのは…

「この間の…ドククラゲ…!?」

「誘拐したのは俺たちだ。俺たちはドリームハンターズ・チームクロウだ。ま、宜しくってとこか?」

「…何が目的なんだよ」

「…もちろん、ボスの命令だけど…あんたのその力がほしいと…」

「こんなものいらないって言ってるだろ!!それにこの間は友…友達が…」

「友だちって言うのに戸惑うのが友達かぁ?」

「・・・友達だ!!」

「おぉよく言ったなぁ…でも、助けに来てくれるのかぁ?あっちは友達とか思ってねーかもよ」

イルの心に重く響いてしまった友達とか思ってねーかもよ、という言葉。

「…違うっ…違うんだ…なんで…!!」

イルの心は、迷いのゾーンへと突入していた。



















「足跡がある」

ノゾムの言った言葉。

「…へ?」

コーザもマリンも見下ろした。

「…これはイルだとしたら…何となく、足跡は周りにたくさん…」

「…つまり、一気に攻撃を食らったのか!?」

「…そういうことだろ…」

「せこいやつらだな」

「たぶん、このなんか得体のしれないたくさんに見える足跡は一匹のポケモンで…」

「ドククラゲとか?」

「そういうことだ」

ノゾムは、じっと見つめていた。

まだ間に合う!!

そして、頭を働かせ、イルの救出法を考える…。

俺なんかのために

2012年07月07日
そうだ。

俺のせいで、多くのポケモンが死んだ。

俺の力に巻き込まれたもの。

俺を捕まえて力を手にしようとして死ぬもの。

俺を生かそうとして犠牲になったもの…。

そんな人たちがいっぱいいた。

俺を守ろうとして、凶弾に倒れた人たちが…。

俺がこの世に生きてたら、また誰かが死んでしまう!!

大事な人が…。

消えちゃう…

泡のように…。

ノゾムやマリンが、俺の力に巻き込まれたりして、命を落としたりしたら…。

「いやだ」

そんなのいやだ。

大事な人が自分なんかのために…。

こんなに生きてる価値のないただのブイゼルのために。

死んだらどうするよ!!

倒れたら…。

みんな、いなくなったら…!













「イル…イル!!」

ノゾムはイルを探し続けてた。

もう、考えをまとめて、決断したのは、ドリームハンターズの建物だった。

檻がある部屋…。

その中に、イルはいる!!

ノゾムは、その部屋を見つけ出したのである。

「待ってよノゾム…」

「仲間のピンチの時こそ、俺は頭がさえるので」

マリンとコーザが息を切らしていても、ノゾムはドアを開け入っていった。

「…イル…?」

きょろきょろしていた。

暗くてよくわからない。

イルは…。

イルはどこに…!!

ノゾムの耳に、声が聞こえた。

泣いてる声。

「…イル?」

暗さに慣れてきた目をごしりとこすった。

「ノゾム…」

イルが初めて見せた涙だった。

ノゾムは、

「大丈夫だったか?」

「…ノゾム…もしも俺が、俺なんかが、ノゾムたちを巻き込んだりして、倒しちゃったりしたら…」

「…俺は、イルの友達なんだからさ、そんな弱気なこと言うなよ」

ノゾムはニコリとほほ笑んだ。

「まぁ、イルなしでも生きていけるぐらいの体力は付けないといけないよな、こういうことしょっちゅうあるだろうし」

ノゾムの背中が、たくましく見えた。

イルに囮を任せて、ノゾムたちはじっと見守る。

「あ、いえ…あの…その…」

イルはいつもはちょっと強気だが、今日は頑張って弱者を演じている。

「…逃げるつもり?逃がさないわよ」

トサキントのしっぽをつかむ力が次第に強くなる。

…痛い。

ヒレだけのはずなのに…。

「…ぐっ…!?」

じわじわと痛みが大きくなる。

「さぁ、行くの行かないの!!」

「わかりました」

イルはついて行った。

「どこに連れて行くんですか?」

「それはねー…」

トサキントがヒレで音を鳴らしたのを、イルは聞き逃さなかった。

「アクアジェット!」

後ろから出てきた下っ端たちに向けてアクアジェットを放った!!

「な、何するのよ坊や!!」

「俺は探検隊なんだよ」

イルはにやりと笑う。

「このっ、やってくれたわね!!ハイドロポンプ!!」

「じゃ、こっちも」

ハイドロポンプとハイドロポンプがぶつかる。

「大体、不審者じゃんか。何するのよって言われたって、悪いやつには容赦しないのが普通じゃないの?」

「やってくれるじゃないの」

「ばっかばかしいんだなぁ…ソニックブーム、続けて水の波動!!」

ハイドロポンプを上にかわして至近距離に迫りソニックブームと水の波動を決め、トサキントを倒した。

「力を使うまでもないぐらい弱いわあんたは…」

イルが手を払った。

「スゴイねイル!!」

かっこいいとかなんとかいろいろ言われても全く動じないイルであった。

そして、ノゾムたちに、

「トサキントが持ってたの、こっそり盗ってみた」

イルが見せたのは、やはりドリームハンターズの証明書だった…。

「関係あったんだね、やっぱり」




















イルはみんなと別れて、のんびりねぐらにでも帰るか、と向かった。

ちなみにイルはマンションのようなものに一人暮らしだ。

その名も「ウォーターヒルズ」である。

そしてウォーターヒルズが視界に入ってきたその時。

「おい、いたぞ!!」

「!?」

後ろにいたのは、黒ずくめの誰かだった。

「…捕まえろ!!」

「え?」

きょろきょろしていたイルの腕を、後ろで押さえた。

「放せっ…この!!」

「殴れ」

イルは一発、殴られた。

何ていう馬鹿力…。

イルはどんどん意識を失っていった。

そしてその様子を見ていたポケモンがいた―――。


















次の日。

「イル、遅いなぁ…」

「…大変だぁぁぁ~!!!」

一匹のヒコザルが、ひょこひょこ走ってきた。

「どうしたんだ?」

「きっ、昨日…の夜…あっちの、ウォーターヒルズの近くで、誘拐犯がいて…なんか、たぶん、ブイゼル…?っぽいポケモンが、つっ…捕まってて…!」

「…それ…もしかして…!!」

「何か知ってるんですか!?僕も手伝います!!」

「そりゃ助かるぜぇ…じゃ、頼んでもいいか?」

「はい!!僕はヒコザルのコーザです!!」

「俺はノゾム、こっちはマリンだ、宜しくな!じゃあ、その誘拐現場につれていってくれ!!」

「はいっ☆」

コーザとノゾムたちはウォーターヒルズに向かった。

夢の中

2012年07月04日
「…イル、起きないね」

マスクをしながら、ノゾムとマリンはイルの様子を見てた。

「…ポケウイルスって怖いんだね」

「…ほんとだよ…」

「じゃ、俺らはいこっか。仕事あるし」

そして、部屋を立ち去った。



















一方、イルの夢の中。

「…うっ…」

前がよく見えず、ボーっとする。

しかし、なぜか前には自分がいた。

何か大きなものを前にして戦っていた。

後ろに倒れているのはマリン。

…なんなんだこの夢は。

マリンに触れようとしても触れない。

これはなんなんだ。

ノゾムは、自分の横に立っていた。

ノゾムがその大きな何かに十万ボルトをする。

しかし、全く効いておらず、ふり払われて、ノゾムに攻撃している。

ノゾムはその場に倒れていた。

残った自分は何をするんだろう。

前にいる自分の拳が震えていた。

そして渾身の技であるハイドロポンプを思いっきりかました。

しかしなかなか効かない。

そして、ついにその大きななにかは前にいる自分に攻撃してきた。

しかし、その大きな何かは自分のことを狙っているわけではなく、ノゾムを狙っていた。

そして自分はそのノゾムの前に立って…。





















目が覚めた。

あの夢はなんだったのだろう。

すごく…恐かった…。

でも、ノゾムの前に立った俺はその後どうなったんだ?

かばおうとした。

守ろうとした。

この俺が…ほかの人を信じた。

だからあんな行動したんだ。

…変だ…。

あんな夢、忘れよう!!



















そんなイルが寝ている屋上にいた黒い影。

「…お前はいつか死ぬ、よく覚えておけ」

そして、自分で出した渦の中に消えた。

ポケウイルスによる熱や症状もだいぶ引いたイル。

今日からは普通に依頼に打ち込める…。

しかし、イルは何やら最初は戸惑っているようであった。

でも、ノゾムはイルをそっとしておくことにした。

何か理由があるから…。














「お…男遊びのトサキント!?」

最近よくこの町に出てくるというそのトサキント。

「男遊び…って♂ポケモン捕まえて何するんですか?」

「僕はよくわからないけど…ドリームハンターズがかかわっているらしい」

プクリン親方が言った言葉に驚いた。

みんなの闘志が燃えたぎる中、ちょっと不安になっていたのはマリンであった。

「…なんか…ノゾムもイルも危ないわよ?」

「確かにオスだけど…何とかなるって!!」

「だといいんだけど…」

心配しているマリンを見て、少し親方はニヤニヤしていた。


















「お…俺が囮!?」

「そういうことで」

「なっ…なんでだよ!!」

「だって探検隊らしいことここ数週間やってないでしょポケウイルスのせいで」

「…分かったよぉ…この辺うろちょろしとけばいいんだよな?」

「そういうこと」

イルは探検隊バッジを外し、歩き出した。

これで、トサキントの動向がつかめる!

そう確信しながら、でも半分警戒しながら歩く。

「…ねぇ君ぃ」

突然声をかけられた。

しっぽをつかんでしゃべりかけてきてないか…?

「ちょっと私と遊ばない?」

「…なんでですか」

「今からすごーく楽しいことやるから、こっちまで来なさい」

次回、トサキントvsイルのバトルが始まる!!

「やっと初依頼だー!!何々、太古の森で救助要請あり…か」

依頼に突入するのが異常に遅いこの物語にも、依頼が一個舞い降りてきた。

「へぇーーーなんか穴に落ちちゃってなんか助けろだってさ」

「穴に落ちて!?」

「はい上がれないのかなぁ…まぁいいや」

ノゾムとイルとマリンは太古の森へ向かった。














「よーしもう大丈夫だからねー」

深い溝に落ちていたメタモンを、縄を使って引き揚げた。

「ありがとうございますー…死ぬかと思いました」

「いや、何のなんの」

メタモンは去っていった。

「さて、戻るか―――」

どさり。

「…イル?」

イルが倒れた!?

「なんで倒れたんだよおい!!しっかりしろ!!」

「…そういえば、なんか噂聞いたことあるわよ」

「え?」

「太古の森にはポケウイルスという感染症があって、いわばインフルエンザのようなもので、それにかかるのは10キロ以上ある中型から大型のポケモンよ」

「なんで知ってんの!!」

「…知識よ知識」

「ブイゼルって体重何キロぐらい?」

「…29キロが標準ぐらいじゃないかしら」

「…マリンは何キロなの?」

「はぁ!?なんでそんなこと聞くのよ?」

「いや…マリンの体重知っといたほうがいいのかなって、マリンがかかる感染症があったりしないかな・・・とか」

「ふつう年頃の女の子にそんなこと聞かないでしょ!!デリカシーないわねー」

「ごめんなさーい」

「で、この軽いの二人でどうやって帰ればいいんだ」

「…俺一応大丈夫だよ…?」

「お前黙っとけ!!」

「…もう、なんか空から呼ぼう」














大きなピジョットに乗せてもらって、ギルドまで行った。

「アリガト―」

「…さて、中まで行くぞ!!せーのっ」

イルを持ち上げて、親方のところへ連れて行った。

「…親方っ…なんかぁ…イルが…」

「ポケウイルスか…隔離して寝かせとけ、そしたら数週間後には直る」

「…はい…」

テキトーだな親方…。

でもなんか調べものしてたし、仕方ないか!!

次回、ポケウイルスにかかったイルが見た夢の話!!

「じゃあちょっと行ってくるね!!」

「いってらっしゃーい」

今日はマリンは一人でお買い物である。

それで俺は何をしてるかといえば、まぁ…留守番だ。

はっきり言って具合悪いので、マリンには悪いけどのんびりここで過ごすことにした。

でもまぁ、イルもいるから大丈夫だろう。

「なぁおいノゾム」

「あ?」

「実はさ…俺、マリンと同じ幼稚園だったんだよな」

「え?」

「ほら、水タイプだし…アクアマリン幼稚園に通ってたんだ」

「そうなの!?」

「そんな驚くなよ」

「驚いたつもりは…」

「驚いてるって」

ニヤニヤとイルが笑った。

実際イルの体力もそこまで回復していないのでイルも留守番。

その時、俺たちの部屋のドアが開いた。

「ちょっと、入ってもいいか?」

親方だった。

「いいですよ」

と俺が答えた。











「マリンについての話をしたい」

「突然どうしたんですか?」

「マリンがいないうちに、と思ってね、盗み聞きなんてされてたら親方失格じゃん」

「すでに俺らに話してる時点で失格じゃないですか」

「まぁまぁ」

「なんでだよ!」

「…それでマリンの話っツーのは…」

「イル君、君はマリンと同じ幼稚園だったんだよね?」

「はい、小学校も同じでした」

「そこであったこと、知ってるかい?」

「もちろん。忘れてません」

親方はふぅ、と一息ついた。

「じゃあ君は知ってるのか。…で、ノゾム君には話さざるを得ないのか」

「…なんのことを?」

「マリンの身にあった事さ」

親方は話し出した。



















マリンは、トレジャータウンに住んでいる子で、私もとても可愛がっていた。

幼稚園の頃は、友達も連れてきて、楽しそうだった。

小学校に入っても、遊びに来た。

父親はこの町の市長だった。

とてもおおらかで優しくて、ついでに僕の飲み仲間だった。

マリンは父親譲りの優しさに加えて、リーダーシップも取れる奴だった。

…そう、あの日までは。





















         《パアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァンン!!!!》






















市長…すなわち、マリンの父は、ある日、町の青年に打たれて死んだ。

マリンは学校に行けないほど落ち込んだ。

あの人気だった父を殺す反逆者がいたこと。

そのことに大いに傷つき、悲しみ、恨んだ。

「…マリン、学校に行きなさい」

何度母に言われても、立ち直れなかった。

事件が起こったのは、その数か月後。

マリンはあの日から初めて、学校に来た。

そしたら、いじめを受けた。

自分でもよくわけのわからないまま。

「お前の父親は、とんだ犯罪者だ!!」

そのことを聞いて、ますますショックは大きくなった。

町のみんなから徴収したお金を、ごっそりどこかへ持って行ったと。

父はそんなことするような人じゃないのに。

マリンは蹴られ、叩かれ…。

マリンはついに、不登校と化してしまった。


















でも、僕は声をかけた。

「マリン…でておいで」

「親方…?」

マリンは部屋から出た。

そして、ギルドへと連れて行った。

「お母さんに話をして、今日からお前はここに住むということになった」

「なんで!?」

「お母さんも同じだ…大丈夫」

「なんで?」

「町にいたら、危ないじゃないか」

「…そうなの?」

「ここなら、ギルドのみんなが守ってくれるだろ?」

「うん」

「お前は一人じゃない」

友達はいなくとも、マリンはすくすくと育っていった。


























いつも笑顔で、いつも明るくて…ポジティブなマリン。

でも、裏には悲しい過去を抱えてるんだ…

「イル君は…いじめていたのか?」

「いえ、クラスも違いましたし…でも、俺のクラスの人たちみんな、マリンのために何かしようって」

「優しいクラスもあったのか」

「えぇ…でもクラス替えで混ざっちゃったので…」

「そうか・・・」

「…親方、俺、マリンのために、何してあげればいいんですか…?」

「お前はな…いつも通り、マリンと接してくれればいい。友達としていてくれればそれでいい」

「…はい!!」

マリンは、俺が大切にする!!

マリンの心は…誰にも傷つけさせない!!

俺は、そう決意したのである。

脱出ゲーム③

2012年07月04日
遠くなった意識。

その中に浮かんでくるのは、自分の過去。

「お母さん…待って…!!」

振り返りもしない母の姿。

「待ってよ…お父さん…!!」

後ろを向いてもくれない父。

「なんで…っ…!?!?」

次第に近づかなくなっていく友達。

「うっ…うぅ…」

泣いている自分を取り巻く「闇」。

闇は、周りの空気を跳ね返すように、一匹の小さなブイゼルを包み込む。

孤立させた。

もう、だれも信じられない…。

「…俺たちは仲間で…友達じゃないか!!」

そんな孤独の空間に差しのべられた一本の手。

イルは握り返した。

そして、イルを立ち上がらせた。

反面信じられないという自分がいた。

でも、そんなの、消えてしまった。

何でだろうか…。

この人なら…ノゾムなら、信じられる気がする。

マリンも…ギルドのみんなも…。

そんなことが頭の中を満たした。























「ねぇ、どこに出ればいいの!?」

「…うぅ~…」

出口を忘れて、走り続けるノゾムとマリン。

「あ、館内マップがある!!」

「なんでだよ!!」

「…えぇ~…と…」

とマリンが出口を探していたら…。

「マリン危ない!!」

「え!?」

マリンが振り返ったら、そこにはドリームハンターズの下っ端がいた。

「キャッ!?」

マリンはつかまれてしまった!!

「ちょ・・・放しなさいよ!!」

とマリンはくちばしでつつく。

しかし、放してくれない。

「マリン!!」

ノゾムが、マリンを助けようとしている。

「十万ボルトーっ!!」

しかし、そんな大技出るはずもなく、ただ、ピリッと辛い空気が流れる。

その空気が、イルの目を覚まさせた。

「…あれ……ここ…!!!!」

ノゾムが苦戦してる!!

「…アクアジェット…っ!」

体が痛んでいる。

そんなことはわかってる。

でも、友達を助けたい!!

そして、イルは、下っ端へ向かっていく。

下っ端をバチンと一発はじくと、マリンをつかんでいた手を反射的にひっこめたので、マリンをいとも簡単に救出した!

「ありがとう!!」

「礼を言われる筋合いじゃない…」

しかし、そこに、さらに二匹の下っ端が!!

「…渦潮!!」

「水の波動!!」

「…雷!!」

出るかどうかわからず、イチかバチかの雷。

何故か、出た。

三匹は、目を回して倒れていた。

そして、出口へと向かった。


















「おい…おぶんなくていいって!!ハズカシイからやめろ!!」

「なんだよ、助けてあげたのに…」

「俺だって助けただろーが!!」

イルはおんぶされながら、ギルドへと向かっていた。

本人はめちゃくちゃ嫌がってるのに、ノゾムはやめないのである。

「ねぇ、イル…なんかさ、イルの体温、高くない?」

「…そうか?」

「高いよなんか」

「…うっ…!!」

頭に激痛が走る。

「…ちょっと、寝かせてもらっていいか???」

「いいけど…」

イルはわかっていた。

具合悪い。

もしかして、これは…。

でかい反動か…。

やっと、おんぶされててよかった、と思うのであった。
























そして、疲れをいやすためにみんな眠りにつくのであった。

プクリン親方だけは、ドリームハンターズについて調べていた…。

脱出ゲーム②

2012年07月04日
「…うぅ…」

イルは連行されて意識を失ってから、初めて目を覚ました。

「…あれ?俺…なんでここにいるんだろ…」

首にはぶっとい首輪のようなもの。

手と足にもなんか鎖がつながっている。

「…!!」

この状態は…と、ようやく理解することができた。

つまり、イルは檻の中で、身動きができない状態になっている。

しかもこの状態、異常に体力を消耗する…。

それに加えてあの力を発動した反動で体があまり動かない。

「……くそ……」

イルがつぶやいた。

その時だった。

イルに影が忍び寄っていた。

「お目覚めですかな?」

ドククラゲであった。

「…お前ももうすぐ楽になれるぜ…力から解放される」

「…な…なん…のつもり…だよ…」

イルは次第に体力を消耗しているがために、なかなか動けない。

「…うっ!!」

体に激痛が走る。

「…この鎖には、電気を通す性質を持っている素材を使っている。あの鎖がつながってる場所から電気が放出されて、お前を苦しめるのさ」

「…こんなところで死んでも…」

イルは続けようとした。

が、あの時の記憶が、イルの頭を支配した。

















「お前なんか、死んでも死ななくても、いてもいなくても変わらない」

「なんでそういう子に生まれてきたのよ」

「隕石にあたるなんて、ふざけてる」

力を手にしてしまい、差別され、何度も死のうとしたあの時の記憶。

自分から力を手に入れたわけじゃない。

彼の不運であった。

「もう・・・いやだぁぁぁぁぁああ!!」

そして、だれも自分に触れなくなった。

近づけば、力で飛ばされる…、と。

親からも見放され、一人で生きてきた。

そして、完全に周囲のものすべてを信じなくなった。

信じるのは、自分の良心だけであった。

イルは、完全に心を閉ざしたのである…。

















「…そうだよ、俺なんていてもいなくても変わらない…」

イルはつぶやいた。

「やっとその気になったか!」

ドククラゲが嘲笑する。

そして、その時だった。

「…まぁぁてぇぇぇぇ!!!!!」

と、イルの檻の前にノゾムとマリンが現れた…。

「…ノゾム…マリン…」

イルは少し、ニコリと笑った。

でも、半分、ノゾムとマリンを信じられない自分がいた。

この微妙な心境で、イルの精神は崩壊していった。

イルの中にあったリズムが、休止符を打った。

イルの時は止まった。

「…どうやら、ショータイムのようだ…」

ドククラゲがにっと笑う。

次の瞬間、イルの体は宙にぶわりと浮き、光を放つ。

強烈な力だった。

いつもの何倍ともある力で…。

イルはノゾム、マリンを光で包み込むようにして飲み込んだ。

しかし、力は一日一回が限度。

それを超えたら、体に危険が及ぶ…。



















「…ウェ~…ん…」

心の奥底で、小さな自分が泣いている。

周りはどんどん闇になっていく。

自分はその闇に阻まれ、顔も上げられない。

その闇から、一本の黄色い手…。

イルははっと我に返った。

黄色い手を、握り返した。

「イルーっ、俺たちは仲間だ!!信じてくれ!!お前の過去に何があったかなんて知らないけど、俺たちは仲間で…友達じゃないか!!」

その瞬間、周りの闇が花畑のように色とりどりになる。

そして、光もおさまっていった。























限度を過ぎ、意識を失ってしまったイル。

次回、イルの決意と基地からの脱出!!

脱出ゲーム①

2012年07月04日
「…はぁー…」

ため息をついたのはノゾム。

「どうしたの?」

「…なんで俺、探検隊してんだろう」

「…なんでって…いや、え?どうしたの急に」

「…俺ね、たぶん結構ネガティブな人間だったんだよ…」

「いきなりそんなこと言わないでよ!!」

「ごめんごめん…」

といった矢先に、なんでかマリンもため息をついた。

「どうしたんだよお前も」

「…え?あ、…私、過去のこと思いだしちゃったみたい…」

「過去?」

そういえば、親方、マリンに友達ができたこと、なんか驚いてた気がするな…

気のせいかな?

「…そういえば朝礼じゃね?」

「あぁぁ!!」

ノゾムとマリンは急いで階段を下りて朝礼へと向かった。



















依頼掲示板は何もなかった。

「あれぇ、おかしいなぁ…いつもならもっとあるのに…」

「いつもなら?」

「今日は平和な日なんだよね多分。じゃ、イル連れて遊びいこー★!!」

「…ありかよそういうの…ま、いっか!!」

チーム稲妻、序盤から小学生チックです。



















「…はぁ…」

イルは、二人に呼び出されて待っている間にため息をついた。

(思えばみんなため息ばかり?)

何で俺はあんな災難に…。

ブイゼルは、過去にある出来事を持ち、そのせいで今、追われる身になっている。

「…あ、来た」

しかしブイゼルはまだ完全にノゾムたちを信頼できていなかった。

それも、過去の出来事のせいである。

「イル―――…」

ノゾムが呼んだその時だった。

「ここにいたかぁーっ!!」

「…うわぁぁああ!!」

イルが叫んだ…。

「イル!?」

煙幕を撒かれていて、前がよく見えない。

「…放せ…このっ…うぉぉぉぉぉおおおおおお!!」

突然、イルの体が光り始めた!!

「…なんだ…!?」

次の瞬間、二匹のサイホーンが、ノゾムたちの横を横切った。

そして、後ろの木に思いっきり衝突した。

「…ねぇ、マリン…今の、ポケモンの技なの?」

「…なんか…違う…」

マリンは驚いていた。

「…ポケモンの技じゃない技…?」

「技じゃなくて、何か大きな‘‘力’’みたい…」

力…?

何で一匹のこんなポケモンが…。

「…早くくたばれ」

「うぐっ!?」

イルが何かに締め付けられた!!

「…な…」

そこに現れたのは、ドククラゲであった。

「…力は二度は使えねぇ…体力の消耗も激しい…行くぞ、サイホーンども」

「は、はい!!」

「イル!!」

「こいつらは…ドリームハンターズだ…危ないから…来ちゃ…ダメ…だ」

「イルーっ!!」

イルは、何者かによって連れて行かれてしまうのであった…。

そして、ノゾムたちはそれを追っていくことになるが!?

じかいにつづく!!

「…来るんじゃねーよ!!」

ブイゼルがノゾムとマリンに水鉄砲をかけた。

「…わっ!?」

「お前ら、何の目的で俺を追い回してんだよ!!そんなに力がほしいなら、くれてやるよ。こんなのいらないっての!!」

「ま、待って、誤解だよ!!俺たちはお前を助けようとしてるだけなんだ!!」

顔についた水を払って、首を振って、ノゾムは答えた。

「…そうなのか?」

「あぁ」

「信じてもいいのか…?」

「あぁ!!俺もお前を信じるから!」

「…じゃ、お前のこと、信じるよ。俺はブイゼルのイル!!この間トレジャータウンの中に引っ越してきたばっかりさ!」

「…俺はノゾム。探検隊やってる」

「同じくマリン!!あたしのことはマリンって呼んでね!!」

「…探検隊なのか?」

「新米だけどね」

「…へぇぇ~…」

イルの目は輝いた。

「…俺も入ってみたい…」

イルがつぶやいたその時だった。

「…あっ!?」

巨大なサイホーンが二匹、イルに向かって襲い掛かってきた!!

「・・・だぁーかぁーらぁー!!」

イルは一気に空気を吸い込む。

「いちいちうぜぇんだよお前らはぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!」

ブイゼル渾身の一撃!!

「ハイドロポンプ!!」

「あーれぇー…」

あの巨大なサイホーンが二匹一緒にぶっ飛んで行った!!

「…強い…イル強い!!」

「…まだまださ…」

イルはノゾムに向かって言った。

「俺を、探検隊に入れてください!!」

「…もちろん、いいよ」

ノゾムはにっこりと笑って、イルに手を差し伸べた。

「…ほら、握手」

そして、イルはノゾムの手を握った。

俺、この人のこと、信じていいのかな…。














「そう言えばさっきイルは信じるとか信じないとか言ってたけど…なんで?」

「…それは…俺、親に見捨てられたから」

「…そうなんだ…でも、俺たちのことは信じてくれよ!!仲間なんだし」

「…でもまだ信じられないんだ…どこかで信じてねぇんだ…」

「…いつか、心を開いてくれればそれでいいから」

「…あぁ!!」























そして、傷だらけのイルとともにギルドへと帰った。


























信じてもいいのか。

イルの迷い。

まだ、信じられるのは、先の話になりそうだ…。

「ここがギルドだよ!!」

「…おぉ…」

そして中に入って、親方の部屋を目指した。

「・・・広いなぁ」

「一度は入ってみたかったんだぁ…いつも一人じゃだめって言われてて」

マリンはまるで男の子のようだ。

でも女の子らしいところもある。

「おーやーかーたー!!」

マリンが叫んだ。

「なんだい?」

ひょこっと顔を出したのは、このギルドの親方プクリンである。

「探検隊になりに来ましたよ!!」

「…マリン…やっと友達を…」

何かつぶやきかけた親方。

でも、さっと顔を上げ、

「ささ。この中に入って」

親方の部屋に召された。

「…チーム名は?」

「チーム稲妻」

おぉ…と感心した親方。

ノゾムはよく理解していない。

稲妻?

そして、くどい説明をされた。

「…ふんっ!!」

まさかの親方、何か放った…。

マリンとノゾムはこの親方の発した衝撃波で外に飛ばされそうになった。

「はい、登録完了!!」

「あ…ありが…と…ございま…す」

そして、トレジャーバッグと探検隊バッジをもらい、自分たちの部屋へ。

「…すごぉー…い」

藁のベッド。

シンプルな壁。

…牢屋暮らしとほとんど変わらないんじゃないのか?

「ほら、見て」

トレジャーバッグの中をのぞいていたノゾムは、マリンに呼ばれて窓際へ。

「…おぉ!!」

それは、ノゾムとマリンのであったあの砂浜であった。

ちょっと外に行きたくなったノゾム。

「外行かない?これの中身を買いに行きたいし」

「うん!」

ノゾムとマリンは一緒に外に出た。

















でも、何やら人ごみが。

「なんだぁ?」

そこには、一匹のオレンジ色のポケモン…ブイゼルが倒れていた。

「なんだ!?」

しかしブイゼルは、

「行かねぇと…来る!!」

と立ち上がり、ふらりと去っていった。

「え?ま、待って!!」

ノゾムとマリンは追いかけた。



















「なんだよ…お前らも追っ手かよ…」

疲れた目つきでブイゼルが言った。

「…追っ手?」

よく意味を飲み込まぬままのノゾムであった。

プロローグ

2012年07月04日

ある場所に、一匹のピカチュウが倒れていた。

もともとポケモンなんかじゃない、人間だったピカチュウ…。

その名はノゾム。

静かな砂浜へ、一匹のポケモンが歩いてきた。

「…ちぇ、また追い出されちゃったよ…別に一人でもいいんじゃないのかなぁまったくぅ…」

ぶつぶつとつぶやきながら歩いてきたのは、ペンギンポケモンのポッチャマだ。

「…ん?」

ポッチャマの視界に入ってきたのは、白い砂浜に倒れていた黄色いポケモンだった。

「…だ…大丈夫!?」

ポッチャマは素早く駆け寄って、ピカチュウの体を揺らす。

「…うぅ…」

目を覚ましたノゾム。

「…大丈夫…?」

「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!??????!?」

ピカチュウは大きな声を出した。

「しっ!!」

ポッチャマが黙らせた。

「…ところで君さ、なんでこんなところに倒れてたの?」

「…え?」

ピカチュウはきょろきょろする。

「…うぅーん・・・覚えてない」

「どこに住んでるの?」

「・・・覚えてない」

「どうしてここにいるの?」

「・・・覚えてない」

「名前は?」

「…ノゾム」

「ノゾム?あ、僕はポッチャマのマリン!!」

「…ってぎゃああああああぁぁぁぁぁぁああああ!!」

「どうしたの?」

「ポケモンがしゃべってるぅぅ!!」

「なに言ってんの?喋るでしょ」

「いや、俺は人間なんだよ!!」

「ニンゲン?なにそれ」

「・・・え?」

ポッチャマがきょとんとした顔でノゾムを見つめる。

「…俺…まさか…ポケモンになっちゃった…!?」

「…みたいだね」

マリンはよくわからないというような顔をして、でも一応肯定した。

「ところで、マリンて名前女の子みたいだね」

「…失礼だね、僕は女の子だよ」

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

何回叫んだことか…。

「この後どうするの?」

マリンはもろにノゾムの驚きをシカトして、今後について聞いた。

「どうしようもないよ…」

「じゃあさ、探検隊やらない?」

「なにそれ」

「探検隊だよ!!まぁ詳しくは後から説明するから!!ギルドいこっ!」

「えぇぇ?」

ノゾムはマリンに連行された…。