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別れは突然に

「・・・あれ?」

ノゾムは、自分に攻撃が当たっていないことを悟った。

じゃあなんで…。

目をそっと開けた。

一匹のブイゼルの体に、穴が開いているようにしか見えなかった。

「…イル!?」

「……ノゾム…よかった無事で」

「よかったとかそういうのはどうでもいいよ…」

イルは、その場に崩れた。

心臓からは出血が止まらない。

もうすぐ、イルは死んでしまう…

そう考えただけで、涙が出た。

「イル、しっかりして!!」

マリンは、静かに、イルへと歩み寄った。

「…イル…」

もう、マリンは、顔を伏せて、しくしく泣き始めた。

「ごめんね…ノゾム…俺は…たぶん…先に行けない…」

そんなの嫌だ。

おいて行かないで。

ノゾムはそういいたかった。

でも、もう手遅れだった。

「…俺がもしも死んでも…悲しむ奴なんて、一人もいない…だって、俺は、生まれてくる必要なんてなかったんだから、とさ…でも、それは昔言えたことだな…もう、今は言わない…こうして、泣いてくれる奴がいるから…」

「イル!!いやだよ…死なないでよ…気をしっかり持って…」

「もう、命の終わりは食い止めようもないさ…俺は…生きてる意味があったのか、その答えを見つけたんだ」

「答え…?」

「意味、あったんだ」

イルはニコリと笑みをこぼした。

「お前やマリンに会えたことが、一番の幸せだったかもしれない…」

イルの目に、涙が浮かぶ。

ノゾムは、血に手を赤く染めながらも、涙を流しながらも、イルの話を聞いた。

「俺は…幸せ者だな…」

そして、何か覚悟を決める表情をした。

「ノゾム、マリン…今まで…本当に…」

ノゾムもマリンも、涙をぽろぽろどころかドバドバ流した。

「…本当に…ありがと…う………」

それが、最期の言葉だった。

イルの出血は止まった。

時も止まった。

全てが静止した状態になった。

「イル…イル!!!!」

イルは、その人生の幕を閉じた。



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