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脱出ゲーム②

「…うぅ…」

イルは連行されて意識を失ってから、初めて目を覚ました。

「…あれ?俺…なんでここにいるんだろ…」

首にはぶっとい首輪のようなもの。

手と足にもなんか鎖がつながっている。

「…!!」

この状態は…と、ようやく理解することができた。

つまり、イルは檻の中で、身動きができない状態になっている。

しかもこの状態、異常に体力を消耗する…。

それに加えてあの力を発動した反動で体があまり動かない。

「……くそ……」

イルがつぶやいた。

その時だった。

イルに影が忍び寄っていた。

「お目覚めですかな?」

ドククラゲであった。

「…お前ももうすぐ楽になれるぜ…力から解放される」

「…な…なん…のつもり…だよ…」

イルは次第に体力を消耗しているがために、なかなか動けない。

「…うっ!!」

体に激痛が走る。

「…この鎖には、電気を通す性質を持っている素材を使っている。あの鎖がつながってる場所から電気が放出されて、お前を苦しめるのさ」

「…こんなところで死んでも…」

イルは続けようとした。

が、あの時の記憶が、イルの頭を支配した。

















「お前なんか、死んでも死ななくても、いてもいなくても変わらない」

「なんでそういう子に生まれてきたのよ」

「隕石にあたるなんて、ふざけてる」

力を手にしてしまい、差別され、何度も死のうとしたあの時の記憶。

自分から力を手に入れたわけじゃない。

彼の不運であった。

「もう・・・いやだぁぁぁぁぁああ!!」

そして、だれも自分に触れなくなった。

近づけば、力で飛ばされる…、と。

親からも見放され、一人で生きてきた。

そして、完全に周囲のものすべてを信じなくなった。

信じるのは、自分の良心だけであった。

イルは、完全に心を閉ざしたのである…。

















「…そうだよ、俺なんていてもいなくても変わらない…」

イルはつぶやいた。

「やっとその気になったか!」

ドククラゲが嘲笑する。

そして、その時だった。

「…まぁぁてぇぇぇぇ!!!!!」

と、イルの檻の前にノゾムとマリンが現れた…。

「…ノゾム…マリン…」

イルは少し、ニコリと笑った。

でも、半分、ノゾムとマリンを信じられない自分がいた。

この微妙な心境で、イルの精神は崩壊していった。

イルの中にあったリズムが、休止符を打った。

イルの時は止まった。

「…どうやら、ショータイムのようだ…」

ドククラゲがにっと笑う。

次の瞬間、イルの体は宙にぶわりと浮き、光を放つ。

強烈な力だった。

いつもの何倍ともある力で…。

イルはノゾム、マリンを光で包み込むようにして飲み込んだ。

しかし、力は一日一回が限度。

それを超えたら、体に危険が及ぶ…。



















「…ウェ~…ん…」

心の奥底で、小さな自分が泣いている。

周りはどんどん闇になっていく。

自分はその闇に阻まれ、顔も上げられない。

その闇から、一本の黄色い手…。

イルははっと我に返った。

黄色い手を、握り返した。

「イルーっ、俺たちは仲間だ!!信じてくれ!!お前の過去に何があったかなんて知らないけど、俺たちは仲間で…友達じゃないか!!」

その瞬間、周りの闇が花畑のように色とりどりになる。

そして、光もおさまっていった。























限度を過ぎ、意識を失ってしまったイル。

次回、イルの決意と基地からの脱出!!



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